カフェにて/渡邉建志
蒸気が上がる様子が、すばらしい労働の絵になっている。さなえさんは抹茶を立てている。土曜日だけにカップルや家族連れのお客さんが多く、僕のように男一人さみしく通ってくる客はあまりいない。
松子さんはどこですか、と聞くと、散歩へ行ったよ、公園じゃないかな、とさなえさんが言うので、松子さんをさがしに公園へ出かける。松子さんは公園の藪の中に隠れて座っていた。公園には犬もいて、犬と距離をおいてにらみ合っていた。松子さんはフルネームをたしかきれいすぎ松子さんと言って、猫である。僕が公園で松子さんと戯れていると、犬の散歩をしていた女性が、その子名前なんだったっけ、という。公園の人気者でいろんなひとに可愛がっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)