死神の名付け親/ヴィリウ
 
ゆっくりと、万感の想いをこめる様に目蓋を閉じ、ひたひたと涙に濡れる目を開けました。その時、男は幼い少年になっていました。

あなたに生かされたのです。
あなたがわたしを、ずっと此の世に繋ぎ止めて呉れたのです。
悲しいことがあっても。
苦しいことがあっても。
それでも多くの幸せに彩られた日々でした。
少年の声は高く澄み渡り、彼はひとつ首を振って夕暮れの声で返しました。
「御前の人生は御前のものだった。私は御前に名を与えただけ」
少年の目が細まり、淡い笑みを形作りました。それは長い人生を超えて達観した様な、老いた表情でした。
「あなたが名を呉れた時、わたしに生きるようにと云って下さ
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