かやのなか/いとう
 

その色はにびいろ
こめかみに手を当てて
黙祷するように独りごつ

おかあさん


愛のない乱暴さで
扱われたこどもが頬を濡らし
ごめんなさいと謝り続ける
のに
追いうちをかけるのは
鏡にうつる大人の顔

違和感はにびいろを生み
覆われて
栗色の髪も巻かれた睫毛も
現在さえ消え失せる
幼いこどものわたし
わたしのこどもは震えて
羊水のぬくもりを求めている


かみ殺した叫びに
浴槽の湯はほんの少し波立ってから
諦めたように
静かになるのだ




かやさんの視線の多くは内向きで、
小さな「私」について描かれることがある。
「私」
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