五月の街/前田ふむふむ
わたしは、もう十分に飽きている。
昆虫の眼で、直線の衣装で着飾った庭園のみずを、
頬張りながら、
そんな円の切れ端で、
何度もモノクロームの街を旅している。
わたしの鼓動する空は、
鮮やかな花たちの夏を、見ていないのだ。
自由に高度を束ねている鳥も、
わたしの後塵を編みこんでいるのだろうか。
あなたは、赤いシンメトリーの花が美しいと、
微笑んでいるが、
わたしには、どこにも見えない。
地平線のなくなる場所で、
わたしは、夕立のなかを歩く自画像に、
傘をかけている。
二人で、
みずたまりの窓で、
眩しく稜線を引き分けた山の、
もえる木霊の
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