五月の街/前田ふむふむ
にひろがる、海を歩く。
波のさざめきを分かって、
あなたの声が、
はじめて、平野を映す窓のほうを見つめる。
一面、草を広々とならした固い堆積には、
失われた廃墟から、はがれた家族の集合写真が風に舞う。・・・・
わたしは、イスが丁寧にならんでいる、
カフェの思索を切断した。
鳥も飛べないテーブル。
すべてが周到に整えられている静物たちは、
鋏をいれる傷口をもたない。
やがて、笑い出した汚れを、投げつけられて、
静かな充足が、枯れているみずおとの、
空白で充たされるまで、
わたしは、花を愛でる窓をもたないだろう。
携帯電話を持つ手が震えて。
・・・・・・
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