岡部淳太郎「迷子 その他の道」に寄せて/ふるる
「ただ見つめるだけ、うろうろするだけ」の生と死があり、真ん中にある「迷子」では、迷う者に対する一つの姿勢が示されていると私は感じるわけだが、これらに触れた読者は、では私たちはただ、迷子でいるしかないのだろうか、作者はただ、迷っているだけなのだろうか。という素朴な疑問を感じるかもしれない。
それに答えるかのように、作者は最後に収められている詩「塩を集める」の最終連でこう書いている。
明日があるならば、そう男はつぶ
やいた。海の手前では、門が、た
だひとつ、声もなく立ち尽くして
いた。男は立ち上がった。行こう、
この丘から、海から離れて、ただ
ひとりの自分をみつけようと、男
は思っ
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