鮭缶/小川 葉
 
字を老熊が読む

人間の皆様へ
もう山へは来ないでもらいたい
もしどうしても来たければ
我が子孫たちへあなたがたの際限のない欲望を
植え付けることだけはやめてほしい
あなたがたの欲望が感染してしまった我が子孫たちは
熊としての本来の生き方あり方を見失いつつある
その欲望のために我が子孫は
あなたがたにすでに迷惑をかけはじめている
冬眠前の季節に若者たちは麓の里へそこには
より美味しいカロリーの高い食べ物が
あることを知っている
そんな彼らをあなたがたは射殺する
だからもう山へは来ないでほしい
もしどうしても来たければ
私を殺してからにしてほしい
そのような悪夢を
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