掌編小説『しゃしんの女』 〜下〜/朝原 凪人
 
星を言い当てられ、私はただ頷くだけしかできなかった。薄ら寒いのに暖炉の熱がやけに熱く感じる。汗が顎を伝って、落ちた。

「貴方って、聡いようで、間が抜けてるのね。貴方を玄関で出迎えたのが私だったことで気付かなかったの?」

 言われてみれば確かにそうだった。
 主人自らが客を出迎えるんて。それもこんな一介のライターを名ばかりとはいえ王家の正統後継者が。ありえるはずがない。

「そうでなくても、こんな落ちぶれた家に従者なんているはずもありませんわ。人が埋まると、その熱か何かで雪を溶かしてしまうのかしら?」

 女は独り言のように呟いた。いや、きっと独り言だったのだろう。

「い
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(1)