掌編小説『しゃしんの女』 〜下〜/朝原 凪人
「いえ、きっと、想い、ですよ」
「想い? 貴方って本当に面白いことを言うのね」
女は笑った。初めて口角を上げて。
美人だった。何も知らなければ恋をしていたかもしれない。
「紅色のバラの花言葉はご存知ですか?」
顎に手を当て、女は考えた。考えたふりをした。
恐らく知っていたはずだ。
「……死ぬほど恋焦がれています」
「それが想い、ですよ」
それから女は何も言わなかった。
またあの無表情に戻った。
しかし一筋だけ頬を伝った光は確かに彼女の涙だったのだろう。
私はと言うと、社に戻り女の言葉を思い出しながら、こうして記
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