海と声/まほし
それともながされてしまうのか
うみ、は
ちかづけばちかづくほど
風をいやまし
かけよるかかとを遠ざけようと
しずかに叫ぶのに
地球のうらから腕を伸ばして
蒼い乱気流で抱きしめようとする
うみ、と
ふたたびうたえたら
(ふたたびはあるのか、
灯台を巻き戻す
ねじはあるのか、)
4
ゆりかご、か
あしかせ、か
呼吸にとける旋律で
波は、くるぶしをなでていく
ゆりかご か、あしかせ か、
すぎてゆく、
すぎてゆく水の鼓動は、
足跡を包みこんでは
みなもとに触れるのをやさしく、拒む
喉元でうるむ
潮騒の
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