赤ノアイ/朝原 凪人
女は答えます
あたしのくちびるが黒いのは
男の瞳を喰らっているから
あたしのくちびるの半分だけが黒いのは
すべてをひとつにはできないから
少年はわからないと首を振ります
そう、だったら教えてあげる
ぼうや、お金はあるの?
次の夜
空のボトルに貯めたお金を持って
少年は酒屋に行きます
そのお金は老いていく母親のためにと貯めたお金でした
女はすでにウィスキィを半分飲んだ後でした
赤の中の半分の黒が吊り上げられました
少年は訊ねます
どうしてあなたは涙を流しているのでしょう
女は答えません
少年は赤に抱かれるように店の外に出て
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)