チェス:初期設定の話/渕崎。
うに尋ねてきたのだから、さぞかし奇妙な光景なのだろう。
けれど、目の前の女は気にした様子もなくチェスの駒をどう進めるか思案し首を傾げている。
道玄坂いろは。
義姉の友人の一人にして、この保健室の住人。要するに先輩だ。
「で、何が最初から決められてるんですか?」
「え? あ、あぁ。聞いていたのか」
「聞いてましたよ。こんな至近距離での独り言なんて、嫌でも耳に入ります」
「そうか、それはすまない」
あまりすまないと思った風もなくチェスの駒をすすめ、一応先輩は形式上だけ謝る。彼女はこういう人だ。とらえどころがない、というよりは得体が知れない。
いつもうっすら笑
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