チェス:初期設定の話/渕崎。
 
ら笑んでいるのに、どこか目が笑っていない。
悪い人ではないと思うのだが、善い人かと問われれば頷くのに自分は多少逡巡するだろう。
つまり、そういう人だ。

「初期設定、といものは誰にも与えられていると思うのだよ」
「初期設定?」
「そう。ゲームや小説にあるだろう、根本の変えようもない努力しても変えることのできない最初から自分のおかれた環境というものが」
「あぁ、ありますね」
「君の家庭環境なんて、特殊極まりないがそれを厭い全力で足掻いたところでそれは変えようもない事実だろう? まぁ、君はその家庭環境を厭うているようには見えないが」
「別に気にしてませんね。最初からそ
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