準盲目の青年/はじめ
習をし 好きな子と連弾したりした しかしある日彼女はトラックにはねられて死んだ 彼はそのことを聞いて混乱し 再び心を閉ざしてピアノだけを拠り所にするようになったのだ
彼は美青年である しかし自分のその美しい顔まで自分で見ることができない 彼はベートーベンのようにいつも絶望し 嘆き悲しんではいない しかし昔のあの子のことを思い出すと 紫色の心から涙が零れてきて鍵盤や両手に叩きつける
彼はそうなると一心不乱にピアノを弾き続ける 彼の手は大きく 指は長く太く 腕には逞しい筋肉がついていた それもマッサージ屋で働いているおかげだった また彼には作曲の才能もあった 幼い頃の彼女への想いを曲にして幾つ
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