「よもつしこめに…」への:追記的私信。/カスラ
もしかしたら完璧に間違っていたのかも知れない。
「千」の風にはならないと宣言し、「浮島」に乗りて自らの言葉の指し示す彼岸へと漕ぎ出したこの人が出会うと信じた、その【約束】を間違えていたのかも知れない。
言葉と宇宙の原始からの共犯関係に気付いた彼の意識は、古代ケルト神話を題材に言霊の魔法をかけた。
古代、詩人が祭祀に関わり、その述べることが神託や予言として、あるいは箴言となったことはゆえのないことではないのだろう。例えば、言葉の不思議は、「暗い」という一単語によって誰の意識にもふっと影がさすという、端的な事実に観察されよう。何故そうなのかは誰も知らない。光あれと言えば、光があった。
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