言葉がほしいだけ/ロカニクス
 
かしどれだけ翼と化して厳重に監視しても
イルカと夜光虫のささやきから、クジラと太陽虫のざわめきから
いずれ言葉が飛立ち、人間が降り立つだろう
そして蛍の光による言葉の革命が始まる

 *

三十二歳の主婦は丹精こめた家庭菜園に水やりしながら
初恋の人と、最近お腹が出てきた元二枚目の三十五歳亭主との
言葉を比較して如雨露を擦っている
彼女も如雨露も言葉に飢えて乾ききってしまっている
もちろん初恋の人は言葉に手を伸ばし地面に這いつくばってるし
亭主は夜の街で転がっている地平線を拾ってみては
水平線と間違えた、と言ってまた捨てる
本当は言葉だと思って飛びついたのに

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