花に、雨/弓束
トもきっと同じなはずだ。彼女はすこし慣れた瞳で緑に覆われた空を仰ぐ。サトは呟くように、飴を転がしているためかごつごつした声で言った。
「ラムネ、貰ってくれないかな」
彼女は首を横に振り、サトと目をあわすことなく静けさを作り上げる。ラムネが嫌いなわけでも、サトが嫌いなわけでも無く、彼女はラムネを拒否していたかった。適切な理由は無いにせよ、その意志だけは彼女の中で固く決められていた。
「なんで」
サトはそう言ったのかもしれない。佳代が首をもたげ、サトの言葉を聞こうとすると空が雨を落とし始めた。また、まるで彼女に加勢してラムネを拒むようだ。桜の下に二人は入りきれなかった為、どちらか一人が別の
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