夜ヲ泳グ。/紅魚
 

あんまり夢が幸せだから、
終点告げる声まで、
彼女はいったりきたり、
ゆらり、由良、由良。

窓の外、
海も、眠っています。
粘性のとぷりの底に、
哀しい魚を閉じ込めた海。
濁った水の底にも、
と、いつだったか、彼女に呟かせた、海、です。
水面のぎらぎらを見たくないから、
少女は、醒めても目を開けません。
睫毛を微かに震わせながら、
額を窓につけている。
振動が優しく頭を揺さぶるので、
そのまま、また、
とろとろと眠りに落ちてしまうのです。

【終幕:夜満タス燿】
雲の白。
いつの間にかふるふると。
雨は降らせない雲です。
流れながら淡く光る、

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