夜ヲ泳グ。/紅魚
夜空の水母。
月と、遊んでいます。
少女は細く、細く、歌を唄いながら、
眠たい顔。
さみしくなって
わ、と走ってみたり、
不意に立ち止まって、
月に手を振ったりしている。
ブランコに乗りに行こうか、と考えたり、
こんぺい糖を、しゃりり、とかじったりする。
握り締めた手の内に、
やがて、鼓動。
夢に聞いた柔い声を思い出して、
嬉しくなって。
ふわ・り
少女、は、微笑む。
(おかえり、なさい。おかえり、)
淡い発光に夜道を透かして、
ゆっくりと家路を辿り始めます。
お散歩はおしまい。
この上なく優しい、夜の、始まりです。
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