夜ヲ泳グ。/紅魚
。)
光まとう電波塔へ向けて、子供らはゆきます。
ゆらゆらと、ぼわぼわとゆきます。
後をゆきながら、少女は、
集めた花をぱらぱらと散らす。
踏みつぶして、歩く。
散華。
星の、埋葬。
【第三幕:夢ノ月ノ水】
月。
半分より少し大きい。
(あれはきっと、きみにあげたぶん、ね、)
泳ぎ疲れた少女は、
車窓から、ぼぉやりと見上げている。
きっと、あの水気を含んだ象牙色は、
口にすれば蜂蜜の味なのだと信じている。
いつしか、微睡み。
(みちたこれは、やさしいやさしい、つきのみず、かしら、つつむみたいな、こえ、が、)
柔らかな声を、夢に聞いて眠る、とろり、とろり。
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