夜ヲ泳グ。/紅魚
 
って、
南へ。南、へ。

【第二幕:星ノ弔イ】
金木犀の垣根、延々。
むせ返る馨に酔って少女はしゃがみ込んで。
あ、あ、の声。
足許、一面、
花、花
花。
(きんもくせいって、あきのそらのみずにおぼれた、ほしの、しがい。たくさんたくさん、ふる、のね)
指先、馨染めながら、
一つ、また一つ、
拾い集めて、ハンカチに包む。
(ねぇ、あたし、ないて、あげても、いいんだよ、)

仮装の子らがゆきます。
ゆらゆらとランタンを下げてゆきます。
楽しげな声、声。
(おかしなんか、いらないわ、いたずらが、したい。あぁ、ちがう、ちがう。そう、あれはきっと、そうれつ、なのです。)
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