夜ヲ泳グ。/紅魚
 
山羊が葦笛を吹く。
天馬の羽ばたきに不思議の星は揺れて、
金の羊は、雨季に溺れる。
(あ、あ、おぼれて、しまう、よ)
囁きは海風に散って、
少女は、さみし、かなし、と俯く。

南の夜空に手を伸ばして、
掴む仕草。

(あれ。あのほしが、ほしいの)

彼女には空が高すぎて、
両脚揃えて少し跳ねてみたり、する。

(でねぶ・かいとす。くじらのしっぽ、)

光、包んだつもりの両手、
大切に、胸許。
尻尾掴んで引き寄せたら、くじら、降りてくるのじゃないかしら、と、
幼い空想に少し楽しくなって、
少女は、ふ、ふ、と笑ってしまう。

進路、変更。
くじらを追って
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