幻想と真理の彼岸で/板谷みきょう
間にいつしかあれだけ太っていた体も痩せ細り難無く檻の格子をするり抜け、目の前のごちそうを喰らい始めたのだ。『現代思想・入門』というごちそうを、僕の眼と左脳の一部をこっそりと使って。
「全ては『胡蝶の夢』でしかないのサ…ないのサ…ないのサ…∞。」
彼、アッケラ感は虚無の嵐のドラマーみたいな。
そう、つまり完全なニヒリストみたいだ。覚醒の内に体験している現実世界を、存在すら踏みにじっていく。人間の温もりを奪い、豊かな交流や関係を、意味の無いものにして拒絶し続ける。個人の思いは個人だけのものでしかなく、共有する事はできない。
まして、その個人の思いそのものすら、本当に現実なのかどうか怪しいも
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