春四月、桜の下で/黒猫館館長
 
じる季節なのだ。

 
さて庭を見ると梅の花が咲き出している。
渋い梅も善いがやはり春は桜であろう。
特に酔っ払いどもが騒がない深夜に公園でひとり茶を飲みながら夜桜を観るのが善い。
わたしの地方の公園の桜は白い。
人生の白秋を思わせる色だ。
しかし春に観るのならわたしは市外の川べりにあるまだ若い桜を観たい。
若い桜は薄い桃色をしている。
力強い生命力を感じさせる色だ。

夜桜で若い桜を観る。
そのあまりの艶かしさ。
わたしはその艶(えん)に不吉なものを感じる。
死の予兆にさえ思わせる。

病んだ老人が死を想うことは少ない。
しかし若者は死に憧れる。死から最も遠
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