祖父のこと/ふるる
しい研磨機の音がする。それはまるで生き物の心臓の音のようだ。私は工場や機械が好きだった。規則正しく鼓動しながら、決して喋らない。甲高い声で笑いもしなければ、さあお客さまにご挨拶しなさい、とも言わない。
よく喋る祖母や母がいないと、戦後すぐに建てられた古びた家は、多少の暗さを含み広々としんとした。
しんとした中で、ある日私は祖父とおやつを食べながら、童話の世界に入り込んで、夢中で読んでいた。終わって、本を閉じたとき、
「もう、終わったのか。」祖父が聞いた。
「うん。」
それだけだった。
それだけのことを、今でも覚えている。
あの古い家は土地を借りて建てられていたので、バブルの時
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