僕は神様/はじめ
水分をたっぷり含んで、泥はできそこないの接着剤みたいに靴の側面に付着していた。それは靴に巻きつく得体の知れない毒虫の様にも見えなくもなかった。僕がそんなくだらない想像を膨らましていると、急に両足の裏がやけにこちょばしく感じた。僕は慌ててスニーカーを脱いだ。脱いだあと、足の裏を中途半端に伸びきった指の爪でせっせとかきながら、今朝の自らの失態に対してイライラ感たっぷりにブツブツと独り言を呟いた。それでも腹の虫が好かない僕はスリッパのように靴の踵を踏んづけて履き直し、すぐ真上にある気持ちいい色をした青空に向かって、新品の泥靴を片っぽずつ順に勢いよく飛ばした。しかしあまり距離が伸びず、片っぽは右下の物置の
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