余剰の中で/水町綜助
本があるとするなら
それがとても早く
透明に
めくり続けられ
藁半紙に荒く刷られたくだらないお話を
透き通ったまま
いちどきに終わらせ
ぱたりと
閉じきったとき
まるで合図とでも言うように
かわりに
薄められた緑色に浸されたような色合いの
強い解放を心にもたらした
という人生の終わりだったとして
そうだとして
それ
があった訳だけれども
僕はまだそのまま続いている
以来もうないが
そこからが一つの
余剰だとして
語られない日常であり
僕のながい余暇のはじまりであるなら
そのとき感じた
ひとつの
胸騒ぎの余韻で
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