余剰の中で/水町綜助
 
たとえば僕の場合それは
初めて
しり あった

というやつと
つめたい汗を皮膚に浮かべながら
五月
間延びした地方都市のなかで
その延びきったらへんで
道がすこしだけ
ほんの少しだけ
上を向きかけ
町に住む人々
人々を
ほんの少しだけ
洪水にひたらない位には
空に上げてくれるような
丘の上の道路を
助手席でうつろ
サムシングでも聞きながら
仰向けに運ばれたとき

丘陵地のちょうど頂にさしかかり
越えて
いままさに鼻先が俯き加減に丘を降りようとした瞬間

カーステレオの音が急に膨れ上がってそれで

 もしも
 からだのなかに
 一冊の本が
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