連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
だ
いかに多数が岩石の安定にやすらぎつづけていても
君は 記憶を信じる者であれ
九
祈る人
彼は今日も浮世離れ
この川に沿って歩きながら
宇宙の鼓動をその身に感じている
宇宙の明日は 炎であるか
宇宙の明日は 水であるか
いま こうして歩きながら
彼の中で 歌う川
眼の前で歌う
川と同じく自らの体の中から歌う声が
聴こえる
それと同時に彼の脳裏によぎる
括弧つきの過去
(近い過去)
だが彼は何ひとつ学ばない男なので
悔やむということを知らない
ただ彼は眼の前の川を
五感を総動員して感じる
そして歌う
宇宙の明日を信じて
胸の張り裂
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