連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
り裂けそうな夜に祈る人は
遠い叫びを聴いた
それは釣られる魚の声のようにも
吊られる名もなき人の声のようにも聴こえた
最後の声は
いつも悲しいが
彼は宇宙の明日を見つめている
彼は
百五十億の心臓が
ひとつの大きな鼓動を刻む日を夢見る
十
祈る人の
旅はまだ 途中
川の中での 水と水との
囁きかわす声が聴こえて
祈る人はもちろん
どこか遠くで聴き耳
をたてている歌の
神にもそれは聴こえて
いる せせらぎ せせ らぎ
くすくすと笑う 川の顔
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