連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
出来るということを
八
君は誰だ
道ゆく人よ
君はいったい何者なのだ
君は記憶を信じるか
君のその短い せいぜい数十年から百年ほどの間に
起きたあまりにも微小なかけひきなどではなく
誰もが持つ数十億年にも渡る
遺伝子の記録
魂の記憶を
空にあって人は
岩石をうち捨てるべきである
水が
天と地の間で輪廻を繰り返すように
生命は
それが生命である限り
果てもなく輪廻を繰り返す
忘却は
ひとつの宿命であろうか
だが君が求めれば
隕石は君のもとにゆっくりと
やってくる
君は誰だ
川をゆく
祈る人と呼ばれる人よ
君はいったい何者なのだ
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(3)