連作「歌う川」より その4/岡部淳太郎
 
ての生活の規範は
歌と祈りのために整えられるべきである
自らの物語を
岩石に封印して
彼が日夜求めたのは 隕石と
その遠い記憶だった

歌う川を
歌いながら流れる川を
横目に見ながらの彼の 長い旅
かつての古代の大きな旅人のように
祈る人は広大な領野を越えようとしている
人であるということの
広大な領野
そこを越えてからでないと
つかめないものがあるのだ
時々夕暮れに
恐怖することもあるが
それでも彼は
眠りの中にあるだろう神に対して 祈る

彼は
夕方に遅れてやってきた
だが彼は知っている
この夜を歩きつづければ
明日の朝には先頭に立つことが出来
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(3)