「 春からぼくは、 」/PULL.
忍び、
誰にも見られず聞かれず、
頼まれず。
ぼくらは密かに活動している。
先輩は、
この瞬間が快感だと、
いつも言っている。
五。
「今この場所でこの瞬間で、
あたしは確かに生きている。
その実感のために、
あたしは生まれてきて、
ここにいて、
あたしでいるの。
そうじゃないあたしなんて、
もう死んだも同然。
…だったのよ。」
六。
夕方になると、
ぼくらのシフトは終わる。
先輩はてきぱきと、
今日の情報をまとめ本部に転送する。
隣町の本部には、
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