連作「歌う川」より その3/岡部淳太郎
き
祈る人はなおも立ちつくし
川はなおも
たけり
とどろき
雨はなおも降りつづき
天と地の間で
水の握手は延々とつづき
祈る人はよろめきながらも立ちつくし
この宇宙の
あらゆる混沌のために 祈った
雨は降りつづき
それはまるで
天の水瓶の底が割れたかのように激しく
全人類の涙混じりの拍手喝采のように激しく
ひたすら降りつづき
祈る人はよろめいて
川に足下をさらわれそうになりながらもなお
立ちつくし
川は大量の雨の援護を受けて
いよいよ激しく
いよいよ狂暴に
喚きつづけるのだが
それは断じて
川の暴力などではなく
人もまた
そうであるように
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