あるメルヒェン/シリ・カゲル
並んでいる楽器のうちのひとつを選び取り、ステージにあがるのでした。イボガエルは楽器が得意でした。ギターでも、アコーディオンでもなんでも演奏することができました。森の動物たちは、イボガエルがべとべとをうっすらと浮かべているのも目に入らない様子で、彼女こそ本当の音楽家だと思い、うっとりと音楽に耳を傾け、おいしい食事と楽しい話題に興じるのでした。
夏が過ぎ、秋がやって来ようとしていました。その日は朝からじめじめとした南風が吹き、普段は涼しい森の木陰を居心地の悪い場所に変えていました。イボガエルは湖のほとりの流木に腰かけながら、今夜のステージの題目は何にしようかしらと考えていました。音楽の事を考えている
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)