ダニエルは飛び込んだ!/ブライアン
 
わと、地表から解き放たれた椅子であったのだ。驚くダニエルに「気にしないで」と少女は初めて声を発した。

 見えないが、強く懐かしい存在を感じることがよくある。ひどく強い感覚。3年ほど前か、いや、おそらくもっと昔の夏だ。初めて意識的にその存在に気がついた。霊と言えば馬鹿馬鹿しくも感じる。ただ、その存在は視覚で捉えることができない存在だった。
 世界中に満たされた見えない存在を感じると、自分も同様に世界に拡散されている存在なのだ、と思えた。
 地元の山の上から実家を眺める。湿度の高い盆地は、緑の田に一面占拠されている。青空と言えば言えなくもない、雲の多い日だった。ちょくちょく太陽は雲の陰に隠れ
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