らぶれた/影山影司
転椅子。シーツを剥がれたベッド。仕切りのカーテンはなく、点状のぶら下がるレールが剥き出しに晒される。そこに、キリコ、俺。染みついた獣の臭い。キリコの、声。キリコの甘い臭い。キリコ、キリコ。
胸を触ろうと、左手を腹部から制服の下へ潜り込ませる。「駄目」とキリコが、手を押さえつけて遮る。「上は、十枚要る」「なんで? ヤるだけなら三枚だろ?」「十枚要るの。だから、ダメ」「何で?」「今に、分かる」脊髄の奥がきぃきぃと鳴いた。長方形の脳味噌が潤沢に濡れ始める。脳内麻薬の分泌だ。理性が本能に駆逐され、歪んだ思考が世界を構築する。
「触りたい」
「ダメ」
「なんで?」
「やめる?」
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