らぶれた/影山影司
「いやだ」
キリコが、俺の手を押さえたまま、ひやりと笑った。教室でいつも見せるような、喘ぐような、そんな顔じゃない。理に満ちた、人間の顔。ぞくりとして、思わず手を引っ込める。「良いじゃない」微かに色のついた唇の隙間から白い歯が覗く「ほら、こんなに、楽しんでるじゃない」白い歯の上を赤い舌が舐める「ほらァ」キリコの華奢な両手が俺の右腕を、キリコの股に突っ込んだ俺の右腕を、掴む「動かして……」溜息のような呟きに慌てると「ねェ」とキリコが笑った。
元々、俺はキリコとヤらない派だった。日に日に増えていくキリコリピーター達を相手に、俺は俺で商売に励んでいた。俺の商売は「酒」で
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