砂漠となる/光冨郁也
 
ぶたをとじた闇のなかで。

 手で宙をはらい、仰向けになる。うっすらと目を開けた。ぼやけた視界がしだいに明らかになる。地べたから見上げる空は、透明な青い色。眼鏡のレンズ一枚分隔たっている、距離。手を差し伸ばしてみる。何もつかめない。薄ぺらい雲の隙間から、太陽が現れてくる。ゆっくりと。なにかの影に隠れる。風が地を這ってわたしの顔を撫ぜる。空には何もない、風の音。手をおろす。乾いた砂地に指が触れる。砂をつかんでみる。その手のなかの砂から、わたしは浸食されていった、目をつむる。のどが渇く。水を飲みたい。口を開ける。水の代わりに乾いた風が口のなかに吹きこむ。
 風にさらされ、わたしはゆっくりと冬の砂
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