恋する空の髪/蒸発王
 

涼しげにしておりました
宇宙の風が
さらされたうなじを優しく撫で上げ
空はぼんやりと
この小さな惑星から
遠くの銀河を見つめるのです

星達は孤独でした

命の拍動だけをたよりに輝いても
遠くの星は近くには来てくれません
そういう星を抱きめながら
やはり空も孤独でした

だたひたすら
心臓の鼓動を瞬きにして
絶対純度の暗黒宇宙に響かせて
お互いの孤独が
銀河に充満する日々が
何千年も
何億年も
続いて


ある日

空は初めて
自分に近づいてくる星に出会いました
空に負けない長い髪の毛を
一つに束ね
宇宙の風よりも早く速く
閃いて突き
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