恋する空の髪/蒸発王
 
突き進んでいく星でした
塗りつぶした悲しみを
切り裂いていく

彗星 の姿に

空は心を奪われたのです

彗星は空の青い髪をじっと見つめ
かすめるような
接吻を施して
また旅立って行きました


空の髪の毛は真っ赤に染まりました
艶やかに咲く椿のような
初々しさを流し込んだ朱色でした
結いあげていた長い髪を
ゆらゆらを垂らし
夢見るように流れます

次はいつ会えるだろう
どこで会えるだろう

思いをめぐらしながら
わずかだけ巡り会った
あの時
遠ざかる背中と
かすめるように髪にうけた接吻に
思いをめぐらしながら

初めて会ったあの瞬間
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