恋する空の髪/蒸発王
突き進んでいく星でした
塗りつぶした悲しみを
切り裂いていく
彗星 の姿に
空は心を奪われたのです
彗星は空の青い髪をじっと見つめ
かすめるような
接吻を施して
また旅立って行きました
空の髪の毛は真っ赤に染まりました
艶やかに咲く椿のような
初々しさを流し込んだ朱色でした
結いあげていた長い髪を
ゆらゆらを垂らし
夢見るように流れます
次はいつ会えるだろう
どこで会えるだろう
と
思いをめぐらしながら
わずかだけ巡り会った
あの時
遠ざかる背中と
かすめるように髪にうけた接吻に
思いをめぐらしながら
初めて会ったあの瞬間
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)