果物の匂い/水町綜助
鈍色(にびいろ)の鉄を見ている
あくまで照り返しでしかない光が
滑って離されて放たれる
今目の前にぎっしりと詰まった木々を越えた
越えてうんざりする
体温よりはつめたい朝の
紙をめくり続ける音の
棚に連なって実る赤い果物の
踏みつけられた飛沫(しぶき)の染みの
広がる池の波紋は
横道にそれて坂道を上って
右に曲がってなだらかに上り続けて
左に曲がって墓地が続いて
はしって丘を越えたら平野に吐かれたベッドタウンが見えた
無数のベッドが晴れやかな空の下で眠って
月と星の子供をキャンディの中に固
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