果物の匂い/水町綜助
 
に固める夢ばかり見ている

弾けて濡れた果肉には砂利が付いていて

ベッドの脚はきしむ事のない鉄で

千回眠っても

飽きないのだと



丘の頂で手を伸ばし

朝日に透き通った赤い果実をもぎ取って

町の上にぽっかり開いた空間に

ひとつずつ何個も投げていく

青い壁はまだ朽ちることのないものだから硬く

つぶれて果汁がとびちり垂れ

町に川などをつくり

十も数えるころには

人が住むようになった

今も果物のにおいがつよい



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