十年間/MOJO
いくら往生しても、最終的には進行は工程に追いつき、建築物は無事に竣工するのであった。
毎日々、そういうことの繰り返しのなかで、私は少しずつ精神を病んでいった。転職することも考えたが、その会社は給料が良かった。
私は精神科に通いながら、外国車に乗り、週末にはフライフィッシングにでかけ、ボーナスの度に舶来のギターを買い代えた。浪費と抗欝薬を服用することで精神のバランスを保とうとしていたのだろう。しかし、土曜日の夜、釣りからの帰りにシトロエンがレインボーブリッジにさしかかるころになると、ベイエリアの夜景を見下ろしながら、ああ、またあの理不尽な叱責とクレームの一週間が始まる、と暗澹たる思いに囚われ
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