空の下、浮遊するドアに手をかけ/紀茉莉
 
。どんなに感覚を閉じてあらゆる物事に適応していたとしても。別の部屋に移り、空気が変わり、じっとしていれば、何かは必ず感じるものだ。
人間も生き物なのだから。

そんなふうにして、命をつないでいるとしたら、
空間はゆりかごのようで、ノアの箱舟のようで、墓場のようだ。

そして、それが当たり前にあるのが日常だ。

私は、当たり前のように家に住み、部屋に居る。
用事があればドアを開け、玄関に鍵をして、出掛け、用がすめばまた戻ってきて鍵を開け、部屋に入る。そうして暮らしている。
それがゆりかごであるともノアの箱舟であるとも墓場であるとも、思ってもいないけれど。

いつも、どこにでも
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