空の下、浮遊するドアに手をかけ/紀茉莉
じている時なんかに、その、空に浮いてる抜け殻の空間に、入ってしまうことがあるのかもしれない。
どの部屋、どの空間に入るのかは、偶然で、必然で、ひょっとしたら運命で、あるいは神のみぞ知る、かもしれない。それは過去に幾日かいた空間かもしれないし、全く別の誰かが残していった知らない空間かもしれない。
目の前にあらわれたドアを開け、部屋に入り、身を置く。
「あ、ここは、以前……」
あるいは、
「ここはどこだろう、でも、なんだか懐かしい感じがする」
あるいは
「なんだろう、ここは。押しつぶされそうに気分が悪い」
なんて、部屋に入れば五感が働く。
それまで、どんなに疲弊していても。ど
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