北の国を目指し/川口 掌
ている
斉藤は言う
本来北へ向けて飛ぶ時は
羽ばたきは三分間に十回であるべきだ
お前達はそんな事も判らずに飛んでいるのか
対し佐藤は言う
それぞれ皆感性は違うんだ
原則論として斉藤の言う事は
確かに正しいのかもしれない
しかしそんな事を
今この場で語ってもしょうがない
今はとにかく北へ向けて飛ぶべきなんだ
先頭と中段の境目辺りを
同行取材しながら飛んでいる
三毛猫の坂元は前方や後方から聞こえる会話を
不思議な気持ちで聞いていた
確かにそれぞれの言っている事は
それぞれに興味深く
又それぞれの言いたい事も概ね理解できる
実は坂元にも
坂元なりの北の国へ向け
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