線香/はらだまさる
どうしようもなかった俺を、唯一救ってくれた仕事でもあるからだ。未来に不安はあるが、それほど気にしてはいない。死ぬ気になれば、何でも出来るからだ。三十にもなって怖いものは何もない、と云えば嘘になるけど、そんなことを云う奴はどうしようもない馬鹿だから信じる必要はない。
俺は趣味で絵を描いているが、それを仕事にしたいと考えたことがない。絵や音楽、詩や小説でもそうだが、何かしら芸術というものを仕事、またはお金にしようとすると、それはその瞬間にほとんどの場合において、茶番に成り下がってしまうのがオチだ。真のプロとは、高いレヴェルのアマチュアでなければならない、というのが俺の持論でもある。金のために何かを
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