静心なく/蒸発王
 
際が良いと言ってきかず
個室だってとれる身分なのに
6人部屋の
桜の見える窓際が定位置になった


校長の名前を聞くと
入学した時の
あのけぶるような
薄紅色の嵐を思い出す
染井吉野が満開で
春は大きな竜巻になって私を迎えた
渦巻く花弁の中
未だひっそりと
蕾をふくらませる八重桜の並木が
どこまでも
どこまでも
続くような気になった



春がきて

学校の桜は
一斉に満開になった
染井吉野も
八重桜も
しだれ桜も
山桜も
寒桜も
彼岸桜も
高嶺桜も
七つのすべての桜が
申し合わせたように
一斉に咲いた
桜の花粉症になりそうなほ
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