蒸発王/蒸発王
 

髪も肌も霧の様に溶けていたが
蒸気のまま体の周りを漂い
蒸発したりしなかったりを繰り返していた
青白い霧に囲まれているので
おそらく
私が全て蒸発して雲になると
青白い雲になるのだろう

私はしばらく
大きな一面張りの窓から
一面に広がる虹色の雲を見ていた

くすんだ臙脂色の母
深緑の父
真珠色の親友
金色の恋人

この街の全ては
私の全ては
鮮やかに空へ輝いている



この街から出ることは
出来なかった



在る日
私は気が付いた
私の住む高い高い建物から
手を伸ばすと
彼らの雲
[次のページ]
戻る   Point(13)