蒸発王/蒸発王
髪も肌も霧の様に溶けていたが
蒸気のまま体の周りを漂い
蒸発したりしなかったりを繰り返していた
青白い霧に囲まれているので
おそらく
私が全て蒸発して雲になると
青白い雲になるのだろう
私はしばらく
大きな一面張りの窓から
一面に広がる虹色の雲を見ていた
くすんだ臙脂色の母
深緑の父
真珠色の親友
金色の恋人
この街の全ては
私の全ては
鮮やかに空へ輝いている
この街から出ることは
出来なかった
在る日
私は気が付いた
私の住む高い高い建物から
手を伸ばすと
彼らの雲
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